かわむら こども クリニック NEWS 平成15年 2月号
育児の新しい考え方
最近、考え方が変わっきた育児の話題に触れてみたいと思います。
最初は日光浴からです。「日光浴をしないと、骨が丈夫にならない」と聞いたことがあると思います。しかし、母子手帳から日光浴の言葉が削除され、外気浴だけになりました。近年、紫外線の身体に対する悪影響が取り上げられています。オゾン層の破壊により、紫外線の通過量が増えたことが原因です。しかし、実際紫外線の危険な面だけが独り歩きして、かなり誤解されているところもあります。反射光までも防がなければならず、外にでるときは覆面をしなくてはいけないと思っているお母さんもいます。そんなことはありません。全て自然でいいのです。直射日光に長時間当たることを避けるようにすれば、特別なことは必要ありません。太陽の光は、地球に大きな恩恵を与えていると考えればいいのです。
次は果汁の与え方です。時々外来で、「果汁は何cc与えたらいいのでしょうか」と聞かれることがあります。確かにずっと昔は、母体の栄養上の問題やミルクの成分のため果汁をビタミンの補給として与えた時代がありました。しかし、今の時代はお母さん達の栄養状態も良く(ちょっと失礼)、ミルクの成分も調整されて、ビタミンの補給の必要性はなくなりました。果汁には糖分が含まれるため、むしろその悪影響が心配されています。糖分を多く摂取すると、身体が糖分が多く必要とするという悪循環を形成します。これが、将来の肥満や虫歯の原因ともされています。また、糖分に関する問題で最近クローズアップされているのはイオン飲料です。メーカーがコマーシャルを上手に作るせいか、イオン飲料が健康的な飲み物と思われがちです。しかし、これも同じことです。水分の補給は母乳やミルクで十分なのです。のどが渇いているからとか、汗をかいたからと、イオン飲料で補給をしなければならない理由はありません。むしろ果汁の糖分と同じで、悪影響の方が心配なのです。赤ちゃんだけでなく、子ども対しては糖分の含んだ飲み物は与えないというのが原則なのです。
続いて断乳に関する考え方を一つ。最近は断乳という考え方が影をひそめ、無理矢理母乳を止め無くてもいいと考えられるようになってきました。これがどこかで混乱して、ミルクも止めなくていいと思っているお母さんもいるようです。子どもが母乳を放すまで与えることを、卒乳と呼んでいます。母乳を推進する人たちの中には、何歳になっても欲しがれば母乳を与えていいという考えもあります。やはり母乳もある程度の時期で意識的に止めたほうがいいという意見もあります。さてどの考え方が正しいのでしょうか。残念ながら、絶対正しいというものはありません。虫歯一つについても、いつまでも母乳を続けていると虫歯になりやすいという意見もあれば、母乳と虫歯の関係はないという意見もあります。鶏と卵どちらが先かと同じように、イタチごっこの論戦になります。どちらかを信じるしかないのですが。考え方を一つ述べておきます。これも絶対ではないので、一つの参考として読んで下さい。自然界を見てみましょう。哺乳動物は最初は母乳で育ちます。しかし一人で歩くようになると、やがて母乳は卒業となります。人は歩くようになるまで1年もかかります。そして、歩行が最初の親離れと考えてもいいでしょう。親離れは自立の始まりです。自立するのであれば、母乳を飲まなくなるのが自然なのです。となれば、母乳は長く続ける必要はないと思っています。やはり1歳半を目安に、母乳を止める方向に持って行くのが正しいと考えています。もちろん哺乳瓶は、くれぐれも早めに止めることをお忘れなく。
時代とともに新しい考え方が生まれてきます。育児についても同じことが言えます。新しい考え方の理由をよく理解し、うまく対応するようにしたいものです。
クリニック NEWS コーナーに戻る