かわむら こども クリニック NEWS  平成15年11月号


こども病院オープン

  皆さんだけでなく、我々小児科医が待ちに待った宮城県立こども病院が、11月11日にオープンします。皆さんはこども病院に対してどんなイメージを持っていますか?。
 まずは、設立までの経緯を簡単に示します。小児科医の団体である宮城県小児科医会が平成4年に設立の提言を行いました。その後、宮城県小児総合医療整備総合基本計画−すべての子どもにいのちの輝きを−が取りまとめられ、こども病院の設立にゴーサインが出されたのです。この陰には20万人近いの県民の方々の署名陳情による後押しがあったことは、皆さんご承知の通 りです。
 こども病院の必要性については、平成9年2月号の記事を引用(一部略)します。「レントゲンや検査の器械はもともと大人専用に作られています。検査の台に昇ることや検査のための採血量 を何とか工夫して使っているのです。トイレにしても同じで、子供のためのトイレを用意しているところはあまりありません。健康なら我慢すればいいのですが、病気の子どもたちです。また総合病院の中での小児科の立場は決してよいものではありません。出生率が低下し、子どもの数が減少し入院患者の数が減ってきているのです。東京などでは小児病棟が閉鎖された話が聞こえてきます。動けない子どもばかり入院しているわけではありません。安定期に入れば子どもは遊び回るのです。大人と一緒では、自由に遊ぶこともできません。でも遊ぶ場所が無い病院もあるのです。入院が長期になれば、学業の問題や精神的な問題も生じてきます。ケアするための人たちも必要となってくるのです。そこまで考えると、やはり子ども専門の病院が必要となるのは当たり前のことです。」
 実際の内容について少し説明しましょう。東北で初めてのこども病院には、二つの大きな理念があります。一つは基本理念である”すべての子どもにいのちの輝きを”であり、もう一つは病院の設計理念である”元気のでるファミリーホスピタル”です。この理念に沿って、今後運営されていくのです。病院には16の診療科があり、病床は160床です。しかし今回一度にオープンするのではなく、段階的にオープンし、2004年にすべての診療科病床が揃うことになっています。主な役割は、三次医療です。医療には我々開業医が扱う一次医療、入院が必要な二次医療、高度医療である三次医療に分けられます。こども病院は、専門性が高く、より高度の医療である三次医療の分野を担当することになっています。そのため受診する際には、医療機関からの紹介状が必要になります。カゼをひいたから、熱が出たからといって、簡単に受診するところではないし、できないのが現状です。こども病院には、多くの重症な子どもたちが収容されます。中には病気に対する抵抗力が弱い子どももいます。となれば、簡単に感染症(伝染する可能性のある病気)を受け入れることが難しいことは、お解りになるとおもいます。また、段階的オープンのため開院時には、医師やスタッフの十分な余裕はありません。これも急患を受け入れられない理由の一つになっているのです。
 このように、子ども病院はいつでも診てくれるようなコンビニ病院(この表現は嫌いですが)ではありません。この記事を読んでがっかりされる方、ご支持を頂いた皆さんは不満に思うかもしれません。しかし、この病院によって多くの子どもたちが救われ、重症な子どもたちでも良い環境での入院生活が提供できることは事実です。
も ちろん将来的には救急の対応も考えているようですが、現時点では皆さんがお持ちのイメージと違っているかもしれません。しかし、未来をになう子どもたちのための第一歩であることには間違いありません。子ども病院の設立の目的を理解して、暖かく見守ってくれるようお願いします。


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