かわむら こども クリニック NEWS 平成15年12月号
子どもを信じる
皆さんは、自分のお子さんを信じていますか。もちろん信じているはずです。今回は、この信じるということを考えてみたいと思います。
診察の場面では、様々な状況に出くわします。幾つかの例を挙げてみましょう。健診での発達の遅れは、親御さんにとっては大きな心配です。首が坐らない、お座りができないなど様々です。例えば、9ヶ月検診でハイハイができないお子さんがいたとします。周りでは皆ハイハイができるのに自分の子どもだけハイハイしない。心配になるのは当然です。健診が終わって「大丈夫、異常はありません」と言っても、納得できないことがあるかもしれません。どう考えたら良いのでしょうか。大丈夫と言われたのだから、心配しなくて良いと言うのが結論です。これが子どもを信じるということです。立場を変えて考えてみましょう。自分が他の人の目から見ておかしいと思われたら、決して快いはずはありません。親が子どもをおかしいとか異常と思えば、子どもはどう感じるのでしょうか。決していい気はしないはずです。親だからこそ、子どもを信じて大丈夫と思うことが大切なことなのです。
親御さんがアレルギーの場合、必要以上にお子さんのアレルギーを心配してしまいます。確かに自分が苦労しているのであれば、その苦労をさせたくないという気持ちもあるでしょう。しかし、アレルギーの症状がでる前から、心配しても仕方ありません。一生症状が、でないかもしれないのです。でないということを信じることも大切なことだと思います。心配は、決してよい結果を生みません。心配したからと言って、事実が変わるわけではないのです。となればやはり、子どもを信じるしかないでしょう。アレルギーを心配する親御さんに時々嫌みがちに説明します。「確かに親御さんにアレルギーがあれば、お子さんがアレルギーを発症する確率は高くなります。アレルギーとは、症状が出て初めて病気として考えるしかありません。アレルギーの症状が出ることが心配であれば、たった一つだけ解消の方法があります。アレルゲンが体に入るからアレルギーが起こるのです。アレルギーを起こしたくなければ、何も食べず、空気を吸わないしか方法はないのです。でもこれでは生きていくことはできませんよ」。まずは起こってから考える、そしてお子さんを信じてください。
他にもいろいろなことと、信じることが関係します。病気のときも同じと考えてください。熱が続き咳もひどく、重症で点滴が必要なこともあります。この場合も、きっと治ると信じることが、すごく大事なことです。病気で苦しんでいる子どもが、心配しすぎている親御さんの顔を見たらどうでしょう。自分が病気のとき、周りの人たちは必要以上に暗い表情をした場合はどうですか。それでは心配が深くなるだけでなく、病気も治らないかもしれません。心配をするなとは言いませんが、治ることを信じて、少しでも明るい笑顔を見せることが必要なのです。
子育てでは、様々な困難にぶつかります。その困難を乗りきる一つの方法が、お子さんを信じる気持ちです。もちろん、信じるだけですべての困難を乗りきれるものでもなく、解決できるものではありません。信じることとともに大切なことは、必要な対応を取るということです。特に乳児期では心配の多くは発達や病気に関係することです。その判断や対応の役割は小児科医が担っていると言っても過言ではありません。心配なことは小児科医に任せ、親御さんは信じる気持ちを持ってください。やはり、信じるものは救われるということでしょうか。
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