かわむら こども クリニック NEWS  平成20年11月号


赤ちゃんはカゼをひかない!?−免疫の話−

 2〜3ヶ月の赤ちゃんがカゼで来院すると、決まって「赤ちゃんはカゼをひかないはずでは?」と質問されます。赤ちゃんはカゼをひかないのでしょうか。今回は、赤ちゃんとカゼを例にあげて、免疫について考えてみましょう。
 確かに、「赤ちゃんはカゼをひかない」ということはよく聞きます。これはある意味正しいし、ある意味間違っています。麻しん(はしか)の記事を以前に掲載したことがありますが、昔は麻しんは“命定め”と呼ばれ生死を分けるような重要な病気でした。 この時代では、ほとんどの人が麻しんにかかり、生き残った人は免疫を獲得します。麻しんの免疫を獲得すると、終生免疫といって免疫が持続するため再びかかることはありませんでした。免疫を獲得した女性が妊娠すると母体の免疫が胎児に移行して、赤ちゃんは麻しんの免疫をもらって生まれてくるのです。お母さんからもらった免疫はずっと続くものではなく、6ヶ月程度で消えてしまいます。この免疫が、6ヶ月未満の赤ちゃんが麻しんにかかるのを防いでくれるのです。こんなことから、いつの間にか赤ちゃんはカゼをひかないということに結びついたのかもしれません。お母さんからはたくさんの免疫をもらって赤ちゃんは生まれてきます。しかし、カゼのウイルスは200種類もあり、お母さんがすべてのウイルスの免疫を持っているはずはありません。お母さんがカゼをひくと赤ちゃんにうつってしまいます。お母さんがカゼをひくのは免疫を持っていないということですから、当然赤ちゃんにも免疫がないということです。という理由で赤ちゃんもカゼをひく訳です。カゼをひくことに関して、異常だとかの特別な心配はいらないと考えてください。
 終生免疫という言葉が出てきました。終生免疫とは一生涯免疫ともよばれ、免疫が持続し二度と同じ病気にかからないものです。一方、終生免疫に対するものとして、一過性免疫という言葉があります。これは、短期間しか免疫が持続しないというもので、一度かかってもまたかかってしまう可能性があります。終生免疫になる病気としては、麻しん以外には水痘、おたふくカゼなどがあります。一過性免疫には、普通のカゼ、ノロウイルスやロタウイルス等の胃腸炎をおこすウイルなどが知られています。終生免疫と一過性免疫の違いはどこにあるのでしょう。ひとつはウイルスの変異が関係しています。ウイルスに一度感染すると、その記憶は細胞の中に残っているのです。同じウイルスが再び体を攻撃すると、その記憶が呼び起こされ免疫の機能が働き始め病気を防ぐのです。ウイルスの変異とは、簡単にいうと形が少しだけ変わってしまうことです。形が変わると、別の種類のウイルスと認識され、同じウイルスでも以前の記憶が呼び起こされずに免疫が機能せずにかかってしまうのです。変異しやすいウイルスの代表はインフルエンザで、このような理由から毎年ワクチンが必要になる訳です。また感染する部位によっても免疫の強さが違ってくるといわれています。麻しん、水痘、おたふく等全身感染を起こす病気では免疫が強く残りやすく、ロタウイルスのように腸(粘膜)にだけ感染するような病気では免疫が弱く持続が短いと言われています。軽いカゼのウイルスも同様に感染範囲が狭いことが、免疫が一過性となり何度もカゼにかかる理由とされています。
 ところが最近、終生免疫があれば一生かからないというのは、誤りといわれています。予防接種も終生免疫を持つと考えられていましたが、H19.6月号の新聞記事の“成人麻しん大流行!? ”のように、一度獲得した免疫も時間とともに低下することや麻しんとの接触が少なくなったことによって、免疫が維持できないことがわかってきたのです。同じように病気で獲得した免疫も、少しずつ病気と接触することによって免疫が一生続くのです。ウイルスに接触して、低くなりかけた免疫を持ち上げることを、ブースター効果と呼んでいます。ブースター効果が無ければ、終生免疫は続かないということになるのです。
 “赤ちゃんはカゼをひかない”ということから、免疫のことを考えてみました。ちょっと難しかったかもしれませんが、免疫があれば病気にならないということがポイントです。ワクチンの効果は一生持続するものではありませんが、病気の予防という観点からは重要なことなのです。病気を予防するために予防接種を積極的に受けて、決められた回数や期間はしっかり守るようにしたいものです。

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