かわむら こども クリニック NEWS  平成18年 4月号


ヤバイっす -WBC初代王者に-

 時間がたってしまい、少し興奮が冷めましたが、今回はワールドベースボールクラシック(WBC)について書いてみます。我々の世代、子ども頃のスポーツと言えば野球。現在のリトルリーグの前身の少年野球大会にも参加し、プロ野球の黄金期、王・長島時代を過ごしました。WBCに引き込まれるもう一つの理由は、古い人間なのでAll JAPANとか日本代表というネーミングに引かれるのです。普段Jリーグにあまり感心はないのですが、以前記事にしましたがWorld Cupという文字だけで興奮してしまうタイプです。トリノオリンピックの荒川静香の金メダルも、また同じです。ま、よく言えば、愛国心なのでしょう。
 実は、WBCが始まる前には、関心はわずか。大リーグとは差があり、足元にも及ばないという気持ち。3月3日から始まった1次リーグ。当然のことながら、中国、台湾を撃破。冷静なイチローが「王監督に恥はかかせられない」と、珍しく熱い発言を。そして、声が嗄れるまでに声を出していたイチロー。イチローに対する味方が少しずつ変わってきた。因縁の韓国戦の前には、「向こう30年、日本には手を出せないと思わせたい」と、大胆な発言に思わずびっくり。あのイチローが、こんな発言をと。結局、その発言が韓国選手に火をつけたのか、日本は3-2で惜敗。日の丸を背負って戦ったイチローの言葉「1点を取ればその1点が少なく感じるし、1点を取られればその1点がものすごく遠く感じるところがシーズンと違う」がとても印象的だった。
 1次リーグを2位で通過し、いよいよアメリカでの2次リーグ。第1試合のアメリカ戦では、疑惑の判定。あの判定が無ければ勝っていたと、日本人であれば誰もが思ったはず。疑惑の判定が、またまた日本人の気持ちを熱くした。第2試合のメキシコとの負けられない一戦での勝利。第3試合は、因縁の韓国戦。しかし、またまた2-1で惜敗し、準決勝進出の望みは風前の灯。あきらめかけていた時に嬉しいニュース。アメリカがメキシコに負けて、棚ぼたの準決勝進出。意気消沈後の進出で、また気持ちはさらに熱く燃えてきた。そして準決勝は、3度目の韓国戦。2度目の敗戦で、「野球人生で最も屈辱の日」と述べたイチローの言葉が蘇った。韓国を6-0で完封。この時期から、ひとつの目標を持ったAll JAPANがチーム一丸となって、優勝という目的に向かって突き進んだ。その後は承知のように、キューバを10-6で破りWBCの初代王座に。初代ということは、非常に大きな意味を持っている。永遠に語り続けられるという理由から、初代の持つ文字の意味は大きい。決勝視聴率が平均43.4%、瞬間最高は王貞治監督が胴上げされた場面の56.0%だったことが、日本中の盛り上がりを示していた。国を愛する気持ちもまんざらではないと、診療の合間に見た勝利の瞬間には自分まで至福の時を感じることが出来た。
 イチローは大記録を残しているにもかかわらず、どちらかというと愛想がなく個人主義者という見方をされていた。しかし、日の丸を背負ったWBCでのイチローは熱かった。自分の活躍に触れることも無く、「ヤバイっす」の言葉はとくに印象的だった。本当に「やばい」と、選手だけでなく日本中の多くの人たちも感じていたに違いない。「野球人生最高の日」の言葉とともに、「僕の方がチームメートに持ち上げてもらった。このチームで、メジャーで戦いたいくらいだ」と目を潤ませた。個人主義より、「フォーザチーム」の大切さを伝えてくれたことが、優勝以上に大きなことだったと思う。もちろん監督の力も忘れてはいけない。卵を投げつけられた王監督、世界一はどんなに嬉しかったことか。王監督、そして全ての選手。おめでとう。そして、大きな感動をありがとう。
 今回のWBCは様々なことを教えてくれました。苦境に立っても決してあきらめないこと。落ちたからこそ、はい上がれること。落胆の後ほど喜びが大きいこと。ひとつの目標に向かって皆が協力すること。それと国を思う気持ちの大切さ。「フォーザチーム」は、言葉を変えれば「家族のために」、「社会のために」、「国のために」にも当てはまります。これらのことは、家庭や職場、そして社会を生きていく上でも、とても役立つことでしょう。

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