かわむら こども クリニック NEWS 平成15年10月号
疲れるとカゼをひくの?
運動会のシーズンになると、決まって話題になることがあります。「運動会の練習で疲れて熱が出た」と言われますが、本当でしょうか。疲れるって、どんなことなのでしょうか。
まず疲れと言うことに目を向ける前に、風邪の原因について確認しておきましょう。カゼは上気道炎と呼ばれ、鼻水や咳、熱などの症状を来す感染症です。感染の原因には細菌やウイルスがありますが、ほとんど(約90%)は、ウイルスによるものと考えられています。ウイルス感染を総称してカゼと呼ぶことがあり、症状が熱だけのことも珍しくはありません。また、下痢や嘔吐を来す腸炎を「お腹に来るカゼ」と呼ぶこともあり、カゼには様々な種類があるのです。
さて、本題に入りましょう。運動会の練習で疲れるとカゼをひくのでしょうか。また子どもの疲れはどう考えたらよいのでしょう。疲れとは、休みたいのに休めない、眠れないのに眠れない、そんなことが原因で疲れというものが起こるのです。誰でも疲れます。しかし疲れは、休養や睡眠などによりなくなってしまうのです。その疲れが充分に取れずに溜まってしまうのが、疲労(本当の疲れ)なのです。大人では仕事や育児などで、限界を超えて体を使うことが疲労の原因になります。遊びに行って疲れることがありますが、これは本来の疲労とは違うと言われています。つまり疲労には単に肉体的なものだけでなく、精神的なものも大きく関係していると言われています。
次は、疲労でカゼをひくかということです。答えは、ノーです。風邪の原因がウイルスや細菌によるということは、先程説明した通りです。これはカゼと疲労が直接関係ないことを示していますが、間接的には関係があります。カゼをひく原因には免疫が関係し、疲労の蓄積により免疫にも影響を与えて、カゼをひきやすくなるとも考えられています。
もう一つ疑問を。子どもは、疲労するのでしょうか。ドライブをして一日中遊んでくると、子どもは帰りの車の中では決まって寝てしまいます。運動会でも疲れるから、いつもしない昼寝をしてしまうのです。でも大人は、そうはいきません。子どもと一緒に遊んで疲れても、居眠り運転をするわけにはいきません。運動会の後に、必ず昼寝ができるとは限らないのです。子どもが疲れて休みたいのに休ませない、眠りたいのに眠らせない、そんなことがあれば疲労の原因になるかもしれません。卓球の○○ちゃんのように泣いても練習させたり、スパルタ式の受験勉強を強制しているお受験ママは例外ですが。
もう一つ大事なことに気付いて下さい。スキーや海に行ったから熱が出たと言うことも、同じです。また、4〜5月頃の多い相談として、幼稚園や学校に行ったから疲れて熱が出たと言うのもあります。僕が「そうだね」と言ってしまえば、お子さんは二度と運動会にも参加できず、海やスキーだけでなく幼稚園や学校にも行けなくなってしまうのです。なぜなら、子どもに悪影響を与える原因を取り除いてやるのが親の義務だからです。原因と結果を簡単に結びつけると、かえって選択の範囲が狭くなるということを覚えておいて下さい。
疲れたから熱が出るのであれば、社会人は皆熱が出てしまいます。もちろん子育てで休む暇もないお母さん(お父さん?)も同じです。カゼは、ウイルス感染なのです。たまたま偶然の一致でカゼと重なっただけなのです。子どもでは疲れたから何かが起きるということは、まずないと思っていいでしょう。毎年楽しみにしている運動会に参加させるためにも、気軽に考えてあげることが大切です。
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