かわむら こども クリニック NEWS 平成14年12月号
エイズについて考える
皆さんは12月1日が何の日か知っていますか?。世界エイズデーです。今回はエイズ(AIDS)について、少し考えてみましょう。エイズは、現在人類を蝕みつつある病気です。アフリカの情況は深刻で、人口の20%以上が感染している場所もあり、エイズによって人口が減少している国もあるのです。エイズによって、過去に2200万人が死亡しているといわれています。また、2001年の1年間に500万人が新たに感染し、300万人が死亡しているという報告もあります。
エイズという病気、皆さん言葉としては知っていると思います。でも本当の意味は、知らないかもしれません。エイズは後天性免疫不全症候群と呼ばれ、Accuired ImmunoDefficiency Syndoromeの英語の頭文字のA.I.D.S.に由来しています。この病気は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされます。生まれつき持っている細菌やウイルスから体を守る反応を免疫と呼びますが、免疫不全とは免疫がうまく働かず体を守れなくなった状態を指します。免疫不全になると、普通の人には害の無い細菌やウイルス等に感染するようになります。このような感染を日和見感染と呼び、感染が引き起こされた状態をエイズと呼んでいます。HIV感染=エイズではなくて、5〜10年ぐらいかかってエイズになるのです。病状が進行すると肺炎などの重症な感染症を合併し、いずれ死に至る大変な病気です。
感染経路については皆さん御存知かもしれませんが、三つあります。一つは性行為です。HIV感染者の精液や血液、膣分泌液を介して感染します。粘膜や皮膚に傷があるときなどには、可能性が高くなります。男性の同性愛者に多いのですが、男女間の性交でも感染します。二つ目は感染した母体から赤ちゃんへの感染です。胎内での感染やお産の時の出血、母乳からも感染する場合があります。もう一つは注射器や注射針からの感染です。医療機関では個別に注射器や注射針を使い、使用後は廃棄するため感染の心配はありません。麻薬や覚せい剤を使用するときの使い回しによって、感染が広がるのです。
エイズがこれほど問題となる理由は、治療法が確立されていないからです。残念ながら発症を予防するようなワクチンはなく、治す薬もありません。現在行われている治療は、HIVの増殖を抑えることと、日和見感染の治療に限られます。病気の進行を押さえることに関しては、かなり進歩してきましたが、完治させることは出来ません。
治療保が確立していない以上、予防法が重要となります。予防法について説明する前に、今の日本の情況について考えてみましょう。週刊誌の「少年マガジン」にコンドームの使用を呼びかける広告が掲載されたことを知っていますか。最近特に若者中心にHIV感染者が増えていることから、エイズ予防財団が行った活動の一つです。厚労省の2001年エイズ発生動向年報では、国内の日本人HIV感染者は25〜29歳の年齢層が最も多く、感染者数に占める割合は男性21%、女性26%に達しています。さらに20〜24歳の層が男性9.8%、女性19.9%。15〜19歳が男性0.7%、女性5.7%と年齢が低下しているのが、大きな特徴です。日本でもHIV感染が深く静かに先行し増加の一途を辿り、2010年までには3万人から5万人の感染者が発生するとの予測もあります。
治療法が確立していない以上、予防するしかありません。予防法で最も大事なことは、性のモラルの確立です。HIV感染者だけでなく、クラミジアや淋病といった性感染症も増加しています。このように性交による感染症の多くは、不特定の相手との交渉が大きな要因となっています。不特定の相手を避け、性感染症予防のためにはコンドームの使用が大切です。またエイズに対する理解を深め、病気の重大さを認識することも、とても大事なことなのです。妊娠に関してピルは有効なことは事実です。しかしピルはかえってAIDSのリスクを高めるかもしれません。妊娠に対する恐怖より、もっと怖いものがその先に潜んでいることを忘れないで下さい。
エイズの知識を子どもたちに伝えることも、親としての大切なしつけの一つなのです。自分のためだけではなく、子どもたちのためにも、少し真剣に考えてみて下さい。
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