かわむら こども クリニック NEWS  平成22年 7月号


第9回東北外来小児科学研究会

 今月は新聞発行が遅れて申し訳ありません。実は理由があったからです。その理由も含めて、記事にしたいと思います。
 7月4日(日曜日)に、東北大学病院の向いにある艮陵会館(ごんりょうかいかん)で、第9回東北外来小児科学研究会が開催されました。この会は東北地方の小児科医やスタッフのために年1回開催される研究会です。毎年持ち回りで会場が変わり、昨年は福島県が担当でした。今年は宮城県の担当で、昨年の会から院長が世話人になることが決定していました。
 年に1回の研究会ということと、交通アクセスのよい仙台で開催するということで、参加者をどれだけ多く集められるかがプレッシャーになっていました。充実した会にするためには、しっかりした準備が必要であったことはいうまでもありません。 このような研究会の大きな目玉は特別講演です。あまり例えは良くはないのですが、いわゆる“人寄せパンダ”です。“人寄せパンダ”ですが、意味を知っていますか。この言葉は1981年の流行語で、田中角栄元総理が使ったのが最初とされています。上野動物園にパンダが中国から贈られ、連日超満員になったことがもとになっているようです。ちょっと話の道がそれてしまいましたが、特別講演は研究会にとって非常に重要な要素なのです。
 誰を特別講演にお呼びするか悩みました。新型インフルエンザパンデミックの折りには皆さんにもご協力をいただき、ウイルス分離等に関しては東北大学の微生物学分野と協力してきました。今回、新型インフルエンザの研究結果を発表の予定でいました。新型インフルエンザに関する話題作りのために、世界的権威の押谷仁教授を演者に迎えて、新型インフルエンザの総括を聞きたいと思っていました。そんな考えを持ちながら、NHKスペシャルで「MEGAQUAKE 巨大地震」の第4回「津波襲来の悪夢」を偶然目にしました。22万人以上の犠牲者を出したインド洋大津波の研究に関しての世界的権威の東北大学の今村文彦教授が解説されていました。素晴らしい研究を目の前にして、何とか新型インフルエンザと津波を災害として扱い、両教授の特別講演ができないのかとの思いが頭の中に浮かび上がりました。我々が昨年経験した新型インフルエンザも、大きな観点から見れば災害と呼べるものです。特別講演の大きなテーマを「災害」にすることに決め、未来のため災害から身を守るには災害を正確に評価することが大切で、評価から問題点を見つけ今後の対策に役立てることが何より重要という企画です。ということで特別講演の演者が決まり、あとは交渉に臨むだけでした。研究を一緒にしている押谷教授は、二つ返事で承諾をしていただきました。今村教授には災害制御研究センターのHPから連絡先を見つけて、面識も無いにも関わらず、図々しくも直接メールを差し上げました。小児科医療界で少しは有名な院長でも、津波界では全く無名です(笑)。そんなことで少し心配をしていたのですが、ご丁寧な承諾のご返事をすぐに頂きました。正直、返事をもらった時点で研究会の成功を確信できたといっても過言ではない状況でした。
 次は一般演題。以前開催した先生から、“一般演題は集まらないから、少し覚悟したほうが”とのアドバイスをもらいました。ともかく身内で固め、インフルエンザ研究3題と“子ども手当てでワクチンを” 1題、開始前から4題が準備できた状況でした。一般演題のセクションは午前中の2時間なので、8〜10演題ぐらいは必要と考えていました。5月中旬から演題の募集を開始しましたが、最初は梨のつぶてで焦るばかりの毎日でした。多くの先生のご協力と好意により演題が集まりはじめ、最終的に13題となりました。時間が不足することを考えて、自分の演題を取り下げました。多く集まったことの嬉しさと満足、自分の演題を取り下げた残念さが、微妙に入り組んだ感情でした。
 そんな流れと並行して、特別講演演者の先生との交渉。一般演題のためのお願いと演者との交渉。ランチョンセミナー(ちょっと耳になじみの無い言葉かも知れません:お昼にお弁当をたべながら講演を聞くというものです)の講師の設定と交渉。ともかく、忙しく、忙しい毎日が続きました。演題が集まればホームページへの掲載、プログラムの作製と発送。またまた忙しい日々の連続でした。
 最後の最も大きな心配事は、参加者の数でした。仙台開催というだけで多く集まるとのプレッシャーのもと、またまた不安な日が続きました。参加募集を開始して、参加者の数が増えるに従い、不安も徐々に解消しました。日に日に、自分の企画に間違いは無かったとの思いが高まってきたことは言うまでもありません。
 当日は、トイレタイムも十分取れないくらい熱気むんむんで時間的きつかったものの、進行等にはトラブルも無く、参加人数は120人を越え盛況のうちに終えることができました。NHKの取材も予定通り、多くの参加者からの温かい労いの言葉で、疲れたけれど充実した時間と満足が得られた研究会でした。最後に、自分自信に“お疲れ様”。そして“ありがとうございました”。

クリニック NEWS コーナーに戻る